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by 長澤由起子 |
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私の膝で甘えるジュニアです。
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サンちゃんが大変なヤキモチ猫であるということは、以前からよくお話してきました。たとえば、
「サンちゃん、おいで〜」
と呼んでも来ない時は、
「ドタちゃん、おいで〜」
と、他の猫の名前を呼ぶわけです。
すると、
「アニャッ…アニャッ」
ってブツブツ文句を言いながらやって来るというわけです。
同じ兄弟でもジュニアはそうではありません。
ソファに座りますと、
「ニャ〜」
って甘えた声をあげながら、私に体を寄せてきます。すると、
「アギャ〜!アギャ〜!」
サンちゃんがわめき始めます。
隣室に居ながらにして、その状況を察するのです。
ザッコザッコザッコザッコ…
ドアを掻きむしる音です。
乱闘防止対策によって部屋は別々なんですが、サンちゃんがヤキモチヤキなので、けっこう気を使います。
先日、そんなサンちゃんが久しぶりに脱走して、まる二日間不在でした。
通常であれば大騒ぎですが、今回の私は違いました。
人みしり・猫みしりが猫一倍激しいタイプであるということや、三日目には激痩せして戻って来るという過去のデータおよび、ネームカード付きということから、のんびり構えられるようになったのです。
遠慮無しにジュニアと付き合うチャンスでした。
「ジュニア〜」
「アニャ」
「どうね、最近の調子は?」
「ニャ」
「そうかそうか〜」
…で、そうこうして三日目の深夜でした。
「アニャ〜」
遠くからサンちゃんの声を感じました。
二階でテレビを観ながらそれを聞くというのはなかなか困難なのですが、
「サンちゃんが戻った!」
と絶叫していました。
ジュニアを膝からをおろして立ち上がり、慌ただしくドアを開け、ドタドタドタ…と階段を駆け降りて、
「サンちゃん!?」
とドアを開けました。すると、
「アャア〜〜ッ!」
灰色に変色した白猫が玄関に飛び込んできたのです。
「アギャ(腹へった)」
「どこに行ってたのよ!」
「アギャ」
「まったくも〜いっぱい心配させて〜!」
「アギャッ」
それから自分の部屋に駆け上がろうとするサンちゃんを、
「ちょっと待って!」
と、引き止めました。
なぜならサンちゃんの部屋はジュニアの部屋の先。しかし前号でお話しましたように、顔を合わせると乱闘ですから、
「ちょっとここで待ってて」
と、玄関にサンちゃんを押しとどめ、いったん、ジュニアの部屋に戻りました。
ジュニアをシャワー室に閉じ込めてから、サンちゃんを導き入れるという段取りでした。
ところがジュニアときたら、
「ウッア〜ッ!」
なぜか激怒していたのです。そしてその怒りはどういうわけか、私に向けられていたのです。
「な…何で怒ってるのよ?」
と口ごもった瞬間、バキ〜〜ッ!
私の柔らかなふくらはぎに、くっきり赤い筋がつきました。
「あ〜〜〜ん」
と号泣する私に背中を向けるジュニアでした。しかし、
「どうしてなの〜?」
の答を探れば、感情が豊かだから、というだけのことでしょう。
ジュニアはおそらく、私のことを久しぶりに独占したみたいな気分だったのでしょう。ところが私ときたら、サンちゃんの気配を察したとたんに歓喜の声をあげて、走り去ったのです。
それで、傷ついちゃったんでしょうね。
ジュニアはけっして獰猛な猫ではありません。普段はとても従順で、仮に私が手をあげるようなことがあっても黙ってぶたれてくれるような子です。
そんなジュニアがタブーを犯すのはいつも、深く傷つけられた時です。抑えきれない感情の発露みたいなもののようです。
猫たちはこうしていつも、驚くほどに豊かで細やかな心の声を、様々な形にしてぶつけてきます。そしてその声は複雑で、つくづく人と、似ています。
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