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アニマル ファミリー [ オンライン版 ] 2008.March
この物語はノンフィクションであり、登場人物・登場猫もすべて実在します。
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by 長澤由起子

最近めっきり若返って、お肌(毛)つるつる、
5歳(人年齢30代)と偽ってもぜったい通用するモズクちゃんです。


 我が家の最高齢猫といえば、そろそろ十五歳になるモズクちゃんです。
人間年齢に換算すれば、七十代半ばといったところでしょうか。

とにかく彼女は頑張り屋さんです。
サン、ドタ、ジュニアという三匹を産んだとたん頼りの夫(シルクちゃん)に先立たれてしまったわけですが、涙に明け暮れる私をよそに、小さな体でけなげにおっぱいをあげていた姿は、今も記憶に焼き付いています。
直後に転がり込んで来たマネキィちゃんとの間にもポロッと四匹産みまして、呆れるほどの逞しさをアピール。
そして、子供たちのワガママにブンブン振り回されながら、文句を言わず愚痴も言わず、ただ静かに見守っているような母猫でした。

ところが三年ほど前、そんなモズクちゃんの体に異変が訪れました。
「ウゴッウゴッウゴッウゴッウゴッ…」
って突然肩を激しく痙攣させ、そして嘔吐するのです。

その発作はどんどん回数を増していって、やがて日常に定着したものとなり、私のできることといったら、
「ウゴッ」
の声を聞くや一秒でも早く飛んで行き、痩せた小さな背中に手を当てて、さすってあげることだけでした。

食もだんだん細くなり、
「トシには勝てないね」
というような、諦めムードが漂い始めました。

そして昨年の六月、猛暑も手伝ってかついにダウン。食べ物どころか、一滴の水すら受け付けなくなってしまったのです。
高齢ということで、お医者さんからも、匙を投げられたような印象でした。
「あと三日もってくれるだろうか…」
気持ちはとうに、ペット霊園でした。

ところで我が家にはひとつ、厳しいルールがあります。
「猫は二階!一階に降りちゃ駄目!」
というルールです。
六匹と私が暮すにはまあまあの広さと部屋数があることから、便宜上設定したルールでした。
ところがこの病気をきっかけに、ルールはあっさり破られたのです。
忽然と姿が消えて大騒ぎしていたら、一階の居間のカーテン裏に、隠れるように横たわっていたのです。

遠い昔(…要するに十年以上前)シルクちゃんと一緒にゴロゴロ陽なたぼっこしていた場所だった、ということもあり、ちょっとジ〜ンときて、
「好きな場所で死なせてやろう」
と、あっさり妥協したというわけです。

ところが、以前もお話ししましたように、強引にスポイトで流し込んだ健食がウソのような効果を発揮いたしまして、三日後には奇跡の大回復…にもかかわらず、末だに居座っているんです。

「老い先短い命なんだから好きにさせて」
と言わんばかりの意固地な態度に、なんとなく根負けしてしまったような私たちでした。

そんなある日、
「あれっ?何か足りないみたいよ…」
と、奇妙な変化に気がつきました。
なんとあれほどモズクちゃんを苦しめてきた痙攣と嘔吐が、すっかり影を潜めていたのです。

そして先日、こんな出来事が…。

「たまには二階で一緒に寝ようよ」
と、ためしに誘ってみたんです。そしたらなんと、素直についてきたんです。
息子たちの興奮は言うまでもありません。

やがて歓迎の宴が一段落し、皆が眠りについた時でした。
「ウゴッウゴッウゴッウゴッウゴッ…」
それは、久しく耳にしなかった痙攣のサインでした。

ベッドから飛び起きると、階下へ通じるドアノブに、なぜか直感的に手を伸ばしていました。
モズクちゃんは逃げるようにしてドアをすり抜け、階下へとまっしぐらに駆け降りていきました。

つまり、持病となっていた痙攣の原因は、息子や娘たちに囲まれた暮しそのものだったのです。

「淋しくない?」
「……………………」
もうぜ〜んぜんっ、って感じです。
もちろん、痙攣は二度とありません。

偉大な母猫モズクちゃんは、やっと自分自身の生き方を手に入れたようで、誰を気遣うこともなく眠りたい時に眠り、食べたい時に食べ、そしてときどき遠慮がちに、不器用に、赤ちゃんみたいに甘えてくれる今日この頃です。


 

 

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