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アニマル ファミリー [ オンライン版 ] 2008.June
この物語はノンフィクションであり、登場人物・登場猫もすべて実在します。
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by 長澤由起子

アビーというのは、毛柄にアビシニアンの血が感じられるところからつけた名前です。とても愛らしい性格をしています。


 あれは三年ほど前になるでしょうか、アビーとは、駅に向かう道路の隅っこで出会いました。一目で野良ちゃんとわかる子だったので、たまたま持っていたサキイカを
「お食べ」
って、ほうり投げると、
「アグッ。アグッ…」
って、夢中で食らい付いてきました。

その背中に、
「頑張れよっ」
とエールを送って、そのまま道を急いだのです。
二度と会うことは無いだろうと思っていました。

そして夕暮れの帰り道、雑踏のはるか先に目を落としますと、なんとさきほどの野良ちゃんです。
気のせいかその目は私一点に注がれていて、まるで待っていたみたいでした。

「…まさかね」
と思いました。一瞬見ただけの私を記憶して、しかもはるか先から識別するなんて、出来っこないと思ったのです。
ところがやっぱり待っていたらしく、
「ミャン!」
って、慌てて追いかけてきたのです。
サキイカが、よっぽど美味しかったのだろうと思いました。それで、
「お食べ」
って、残り全部をぶちまけました。

ところがなんとサキイカには目もくれずに、私の後をトコトコトコトコ…ずっと追いかけてきたのです。それで、なりゆき保護したというわけですが、ラッキーにも良い里親さんがすぐ見つかってくれて、ホッ…。

ただ里親のYさんというのは、ちょっとご高齢の独居女性で、
「私が飼えなくなった時は、お願いできますか?」
という条件付きでしたが、私は二つ返事でした。とにもかくにも、とても優しく、しっかりされた方だったからです。

ところが先日、突然電話が入りました。
「明日から入院することになりましたので、アビーをお願いできますか?」
切羽詰まったご様子でした。
「…は?…はい!」
幸いにも入院予定は二週間から一ヵ月とのことで少し安心しましたが、まだ預かり先が見つからないワン子と猫ちゃんがいることに驚いて、
「その子たちも預かりましょうか?』
と申し出ますと、
「い〜え大丈夫です。お願いしている方からの返事を待っているところなんですよ」
と、心配無用を強調されました。

しかし結局はペットショップに預けられたことが後日判明。一泊につき一匹三千円で、なんと六千円とのこと。
「預かりましょうか?」
と再度申し出ましたが、
「アビーを預かっていただけただけで、充分ですよ」
毅然とした声が響きました。
納得づくの選択なのでしょうが、かなりの負担であることが感じられました。

この時ふと思ったのは、預かり先を見つけられなかった動物たちの行く末です。遺棄、もしくは動物管理センターというのが、実情なのです…。

ひと事ではありません。私も(貴方も!)かなりの高率で独居老人への道を爆走しています。
何とかしなくちゃ…ですね。

さて、肝心のアビーちゃんですが、
「私のこと、覚えてる?」
「ニャ〜(覚えてる)」
そりゃ覚えているでしょ、記憶力にかけては抜群の猫ちゃんでしたから。
しかしすっかりしおれてしまって、しばらくは水も受けつけず、かなり痩せこけてしまいましたので、
「こりゃいかん!」
と思いまして、抱き締めながら、
「だいじょうぶだよ〜お母ちゃんは入院してるだけだよ〜また一緒に暮らせるから大丈夫だよ〜だから食べようね〜食べようね〜」
と呪文のように繰り返しました。すると、だんだんフード皿に関心を示すようになってくれて、
「カリッ」
と、小さな音を響かせました…ホッ。

それからは下痢がピリピリピリピリ続き、コロッとしたウンコを見るまでさらに二週間。
そんなこんなで、最近ようやく我が家での暮らしにも慣れてきた頃、待ちわびていたYさんから、やっと電話が入ったのです。

「動物の世話が、無理になってしまいました」
…と。

というわけでアビーちゃんには前言撤回、
「私がお母ちゃんだよ〜お母ちゃんは私だよ〜私だよ〜」
賢い子なので、どうやらもう解ってくれてるみたいです。

Yさん、ご安心下さいね。


 

 

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