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アニマル ファミリー [ オンライン版 ] 2008.July
この物語はノンフィクションであり、登場人物・登場猫もすべて実在します。
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by 長澤由起子

銀糸狼ちゃんは10歳です。


 サンちゃんから、
「出たい〜出たい〜」
と激しくせがまれ、ハーネスとリードをつけて散歩させるという苦労話を前々回でいたしましたが、今回は銀糸狼ちゃんのお話です。
同じ猫なのに、銀糸狼ちゃんの場合はぜんぜんちがうのです。
どうちがうかと申しますと、散歩の訓練を施されたワン子よりも、よほど上手に歩くわけです。おどろいたことに、私の歩調に合わせて、ピタリついてきます。

この才能というか特技に気づいたのは、かなり以前のことでした。

「行ってきま〜す」
と玄関を出ますと、たまたま庭に出ていた銀糸狼ちゃんが、
「アニャ〜〜〜〜〜〜ッ」
って、追いかけてきたわけです。
先を急ぐ身でしたから、追いかけられたって困りますので、
「ついてきちゃ駄目!戻りなさい!」
すると、
「……アニャ〜」
と、哀しい顔をして立ち止るのですが、ちょっと歩いて振り向きますと、まだついてきてるんです。
「戻りなさ〜いっ!」
「…ァ…」
念のためまた振り返りますと、やっぱりトコトコついてきてる。
「戻りなさあ〜〜〜いっ!」
「………」

道ばたに立ち尽くす銀糸狼ちゃんの姿があんまり淋しそうで、ついつい情にほだされまして、
「今度、散歩行こうね〜」
と、お約束。

…といういきさつで、
「散歩だよ〜」
と一緒に出歩くようになったのですが、これがけっこう楽しいわけです。

お喋りな銀糸狼ちゃんは
「アニャッ、アニャッ、アニャッ」
と、しじゅう私に話しかけてきます。
「はいはい…はいはい」
と応えますと、
「アニャッ、アニャッ、アニャッ」
「はいはい……そうだね」
「アニャッ、アニャッ、アニャッ」
「はいは〜い……楽しいね〜」
こうして小さな脚でトコトコトコトコ…弾けるようについてくる銀糸狼ちゃんのそばを、日ざしや風や虫の声や草熱れとかが日替りメニューで追いかけてきて、ヨレヨレになってた私の気持ちも、たちまちプリプリになるのです。

ただ用心しないと、コツ然と姿が消えたりします。
「銀糸狼ちゃ〜〜〜ん!」
「アニャア〜〜!」

田んぼと田んぼの間に細い流れ(灌漑水)があったりするのですが、そこで立ち往生してるのです。
わずか数十センチが、なんと、跳べないんです。

「どうしたの?」
「アニャ」
「大丈夫だよ、こんなの跳べるよ!」
「…ァャ…」
「がんばれっ!」
「…」
「がんばれ銀糸狼ちゃん!」
「…」
「がんばれ、がんばれ、がんばれ」
「…………………………………」
「ほらっ!ほらっ!ほらっ!」
猫って俊敏さがウリのはずなのに、どうしたことでしょう。
「頑張れっ!跳べっ!跳べ〜っ!」
っと、根気強く応援します。
「がんばれっ!」
「アニャ〜ッ!」
銀糸狼ちゃんとしては抱きかかえて欲しいのでしょうが、そこは無視。
「跳べっ!ほらほらほらっ!」
「アニャ〜ッ!」
…やっとこさで、跳んでくれます。

「銀糸狼ちゃんって、凄いっ!」
もちろん、誉めることも忘れません。
どうも猫っていうのは上下運動は得意なのですが、意外にも左右運動がまったく得意ではなく、中でも銀糸狼ちゃんは特に不得手のようです。

最近では、地域の境界を超えて、グルッと2キロはありそうな、まさにワン子並みのコースに付き合わせることが多くなりました。
アスファルトの車道を歩いたり、堤防を降りて川を眺めたり、階段をたくさん昇って、神社の境内で遊んだり。

すれ違う人々は皆びっくりします。
「えっ?猫?」
「めずらし〜!」
そんな声を聞いても、銀糸狼ちゃんは動じません。でも、
「はい、猫ですよ」
かなり得意気な私です。

さっ、そろそろ銀糸狼ちゃんとお散歩の時間です。


 

 

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