自我とは口に出して他人に言うこと。
自分自身の心に納得するものは悟り。



 私たちは昔から言葉を「言霊」と言い、言葉には魂があると考えてきました。言葉が正しければ相手の魂を安らかにし、悪い言葉であれば相手の魂を苦しめます。
 口に出したものだけを言葉だと思ってしまいますが、心の中で思うことも言葉です。その思いは、たとえ口に出さなくても、相手に通じます。口先だけのお世辞が不愉快に感じるのは、心ではそんなこと思ってもいないことが分かるからなのです。自分の言った言葉を相手が誤解してしまうのは、自分の心に愛が足りなかったからですし、自分では言葉が足りなかったと思っていてもきちんと相手に通じているのは、愛があったからなのです。相手の立場に立ち、相手の心を傷つけない、相手を明るい気持ちにさせる言葉を使うことが大切です。
 このように言うと、いつもやさしい言葉をかけなければならないと思われるかもしれませんが、それは時と場合によります。厳しい言葉や叱りつける言葉、沈黙という言葉が必要なこともあります。
 言葉を口に出すときにもっとも必要なのは、知恵を働かせるということです。自分の思ったままをストレートに口に出し相手を怒らせてしまうなど、知恵のないことですし、反対や他人の目を恐れて正しい発言ができないというのも、また知恵のないことです。その場その場でしっかりと状況を判断し、知恵を働かせることが重要です。
 また、事実を伝えるときにも注意が必要です。事実であっても、相手によっては言ってはいけない場合があります。余命の告知を考えていただければよく分かるでしょう。本当のことを言うことで相手の心から明るさや元気を奪うようであれば、それも知恵のない言葉です。昔から「嘘も方便」と言うように、相手によって言葉を選ばなければなりません。
 人は言葉によって意思の疎通をはかります。言葉の使い方をまちがえると、相手の心を傷つけ、やる気をそいだり、劣等感をもたせたりと、相手を苦しめることになります。そういう言葉ばかりを口にしていると、当然人は遠のいてゆき、孤独になります。どんなときでも相手の幸せを思いながら、相手に自信と勇気と明るさを与える言葉を口にできるようになりたいものです。


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